仮想マシンサーバが障害などで停止した場合、SigmaSystemCenter はVM最適配置機能により、共有ディスク上に存在している仮想マシンを他の健全な仮想マシンサーバへ退避します。
VM退避の場合は、VM最適配置機能の有効/無効に関わらず、仮想マシンサーバのメモリ使用量やキャパシティなどを確認し、条件を満たす移動先に移動を行います。
このため、負荷分散/省電力を利用せず、VM退避のみを利用する場合は、VM最適配置機能の設定を省略することができます。
VM退避機能は、以下の操作で利用されます。
ポリシーアクション | コマンド |
---|---|
VMS操作/ 稼動中のVMを移動(Failover) | ssc evacuate host (仮想マシンサーバ指定時) |
VMS操作/ 稼動中のVMを移動(Migration) | ssc evacuate machine (仮想マシンサーバ指定時) |
VMS操作/ 稼動中のVMを移動(Migration/Failover) | ssc power-control machine Operation -option Failover |
VMS操作/ 全VMを移動(Failover) | |
VMS操作/ 全VMを移動(Migration) | |
VMS操作/ 全VMを移動(Migration/Failover) | |
VMS操作/ 全VMを移動(Quick Migration/Failover) |
「稼動中のVMを移動」するポリシーアクションは、対象となった仮想マシンサーバ上で起動状態にあった仮想マシンを移動対象とします。
移動対象となった仮想マシンは、移動後に自動的に起動されます。
「全VMを移動」するポリシーアクションは、対象となった仮想マシンサーバ上のすべての仮想マシン(停止中のものを含む)を移動対象とします。
移動対象となった仮想マシンのうち、対象となった仮想マシンサーバ上で起動状態にあった仮想マシンについては、移動後に起動されます。
それ以外の仮想マシンについては、移動のみ実施します。
VM最適起動機能を有効にしている場合、障害が発生している仮想マシンサーバ上の仮想マシンは、起動時に正常な仮想マシンサーバに退避した後、起動を行います。
このため、VM退避機能とVM最適起動機能を併用する場合、「全VMを移動」による退避を行う必要はありません。
VM最適起動機能を無効にしており、かつ停止中の仮想マシンを正常な仮想マシンサーバに移動する必要がある場合は、「全VMを移動」を利用してください。
移動対象となる仮想マシンの詳細な条件については、「4.7.4. VM最適配置の条件」を参照してください。
VM退避機能は、VM配置制約、および非常用ホストの各機能により仮想マシンの移動先を制限することが可能です。
また、依存関係、および仮想マシンの優先度が設定されている場合には、仮想マシンの起動操作時に順序制御を実施します。
VM退避機能の各操作には、退避時に使用する移動方法が指定されています。
各アクション/コマンドの指定に対し、VM退避機能は仮想マシンを下表に記載の移動方法により移動します。
アクション/コマンドの指定 | 移動方法 |
---|---|
Migration | 仮想マシンをMigrationにより移動します。 |
Quick Migration | 仮想マシンをサスペンドし、その後移動します。移動後に仮想マシンを起動します。 |
Move | 仮想マシンを停止し、その後移動します。移動後に仮想マシンを起動します。 |
Storage Migration | 仮想マシンをStorage Migrationにより移動します。 |
Failover | 仮想マシンをFailoverにより移動します。 |
Move、および Storage Migration はコマンドによる操作でのみ利用することができます。
複数の移動方法が指定されている場合、最初に指定されている移動方法による移動を試行し、それが失敗した場合に後に記載されている移動方法を順次試行します。
たとえば、"Migration, Failover" が指定されている場合、最初に仮想マシンをMigrationにより移動を試みます。
この移動が失敗した場合、さらにFailoverによる移動を試みます。
Migrationによる移動が成功した場合には、Failoverは実行しません。
"Move"、もしくは"Storage Migration" を指定した場合には、仮想マシンのディスクにアクセスできない仮想マシンサーバも移動先候補となります。
それ以外の場合は、仮想マシンのディスクにアクセスできる仮想マシンサーバのみが移動先候補として利用されます。
"Move"、もしくは "Storage Migration" を指定した場合でも、仮想マシンのディスクにアクセスできる仮想マシンサーバが存在する場合には、そちらが優先して利用されます。
ただし、配置制約が指定されている場合には、ディスクのアクセス可否より配置制約を優先して移動先を決定します。
コマンド(ssc evacuate host/machine)による退避操作において、特に移動方法を指定しなかった場合は、"Migration, Failover" の指定で移動を行います。
移動方法を指定した場合、上記の表に記載の順序で移動を試みます。
例えば、移動方法に "Migration", "Move", "Failover" を指定した場合、"Migration, Move, Failover" の指定がされたものとして移動を試みます。
コマンド(ssc power-control machine Operation -option Failover)では、仮想マシンサーバをシャットダウン・再起動する際に操作対象の仮想マシンサーバ上で動作する起動中の仮想マシンのVM退避を-option Failoverの指定により行うことができます。
オプションは-option Failoverを指定しますが、移動方法は"Migration"の移動が行われますので注意してください。その他の移動の指定を行うことはできません。
"Migration"、または"Quick Migration"と、"Move"、または"Storage Migration" を同時に指定し、移動先仮想マシンサーバを指定しなかった場合、移動対象となる仮想マシンのディスクにアクセス可能な仮想マシンサーバだけではEQ, NE制約を実現することができない状況下で、EQ, NE制約違反となる移動が実行される場合があります。
このような状況では、移動先仮想マシンサーバを指定して退避を実行するか、移動方法の指定で "Migration"、および "Quick Migration" を指定せずにVM退避を実行してください。
VM退避操作の結果、「4.7.4. VM最適配置の条件」で移動対象となる仮想マシンについて、移動できない仮想マシンが生じた場合は、VM退避操作の実行結果は異常終了となります。また、移動対象とされない仮想マシンが存在する場合については、下表に記載の条件により結果を決定します(なお、稼動中のVMを移動対象とした場合は、電源ONの仮想マシンのみが判定対象です)。
VMの状態 | 操作結果への影響 | 優先度 |
---|---|---|
Hold制約が設定されている | 影響しない | 1 |
管理状態が"管理外"である | 影響しない | 2 |
メンテナンスモードである | 警告となる | 3 |
他の操作が行われている | 異常終了となる | 4 |
(* 複数条件成立の場合は、優先度の値が小であるものから順に判定されます。)
Hold制約が設定されている仮想マシンは、どのような状態であってもVM退避操作の結果には影響しません。詳細については、「4.7.16. Hold制約」を参照してください。
非共有のストレージ上に存在する仮想マシン等の理由により、移動できない仮想マシンが存在する場合にも、VM退避操作では上記条件により実行結果に反映します。
このため、このような仮想マシンが存在する仮想マシンサーバに対しては、VM退避操作は異常終了となることに注意する必要があります。
VM退避操作が異常終了とならないように期待する場合、Hold制約や管理状態等の設定により、操作結果への影響を考慮してください。
ポリシーアクション "VMS操作/ 全VMを移動"、および ssc evacuate コマンドを -all オプションを指定して実行した場合には、停止中の仮想マシンが退避操作の対象となります。
ただし、VM配置制約(「4.7.9. VM配置制約について」参照)は電源がオンの仮想マシン、および、起動操作が実施される仮想マシンに対して有効となる機能であるため、停止中の仮想マシンはVM配置制約による制約に従いません。
このため、退避先で制約を有する仮想マシンを起動した場合、VM最適起動(「4.7.7. VM最適起動」参照)が無効であると、制約に違反する状態となるために操作が失敗する可能性があります。
VM配置制約が有効な環境において、停止状態の仮想マシンを退避する場合には、VM最適起動機能を有効としてください。
なお、仮想マシンが停止中の仮想マシンサーバ上に存在している状態において、VM最適起動機能を利用して起動操作を行った場合、当該仮想マシンには退避操作が実施されます。
このため、VM最適起動が有効な場合においては、停止中の仮想マシンの退避を実施しない場合でも、それらの仮想マシンを起動することが可能です。
仮想マシンの退避操作が起動時でも良い場合には、最適起動機能を利用されることもご検討ください。
VM退避操作では、退避対象となった仮想マシンに依存しているマシンについて、再起動を実行することができます。
再起動の対象となるマシンは、以下の条件を満たしている必要があります。
電源状態が"On"である
管理状態が "管理中" である。
メンテナンスモードでない(「2.3.4. メンテナンスモードについて」参照)。
ハードウェアステータスが "故障" / "一部故障" 状態ではない。
他の操作が行われていない。
マシンの起動状態は、SigmaSystemCenterが認識している状態を利用します。このため、仮想環境上は電源状態が"On"であったとしても、SigmaSystemCenterが"Off"と認識している場合は再起動の対象とされません。
再起動は、依存している仮想マシンの移動/フェイルオーバに成功した場合に限り実行されます。
ただし、仮想マシンが、
物理マシン
仮想マシンサーバ
移動元仮想マシンサーバとは異なるグループ/モデルに所属する、仮想マシンサーバ上の仮想マシン
のいずれかのマシンに依存している場合は、これら依存しているマシンのうち、移動元の仮想マシンサーバ上に存在する仮想マシン、および停止している仮想マシンサーバ上に存在する仮想マシンのすべてについて、移動/フェイルオーバに成功した場合に限り、再起動が実行されます。
また、このような依存関係が存在する場合には、退避により起動した仮想マシンが、さらに再起動される場合があります。
VM退避操作における再起動処理では、VM退避の依存関係が利用されます(再起動の依存関係ではありません)。
なお、再起動を行う対象は、「自動的に依存先を起動する」依存関係が設定されているものに限ります。
依存先となるマシンとして、VM退避対象の仮想マシンサーバ上にある電源Off状態の仮想マシンが含まれる場合、再起動処理は失敗となります。
このような状況を回避するために、VM退避で使用する依存関係については、起動/再起動にも有効とした状態で設定することを推奨します。
VM退避実行時において、各仮想マシンの配置がVM配置制約に違反した状態となっている場合、再起動処理が正しく動作しない可能性があります。
VM配置制約に対して違反となるような操作を行う場合は、操作後に違反状態を解消する必要があります。
再起動の実行は、ポリシーアクションの場合はアクションパラメータ「DependentReboot」、コマンドの場合は「-reboot」オプションの有無により制御することができます。
「DependentReboot」に設定可能な値は、以下の通りです。
DependentReboot | 退避対象に依存するマシン |
---|---|
0 | 再起動しない |
1 | 再起動する |
アクションパラメータの設定については「SigmaSystemCenter コンフィグレーションガイド」、コマンドについては「ssc コマンドリファレンス」の各マニュアルを参照してください。