1. はじめに¶
本書は、SAP HANAを、CLUSTERPROによるクラスタ構成を構築し、動作させるための手順を説明したものです。
1.1. 対象読者と目的¶
本書は、クラスタシステムに関して、システムを構築する管理者、およびユーザサポートを行うシステムエンジニア、保守員を対象にしています。
本書では、CLUSTERPRO環境下での動作確認が取れたソフトウェアを紹介しています。ここで紹介するソフトウェアや設定例は、あくまで参考情報として提供するものであり、各ソフトウェアの動作保証をするものではありません。
同梱のスクリプトはフェイルオーバを実現するためのサンプルスクリプトです。
サンプルスクリプトの内容をご確認の上、使用環境や監視対象に合わせて調整してください。
1.2. 本書の表記規則¶
本書では、注意すべき事項、重要な事項および関連情報を以下のように表記します。
注釈
この表記は、重要ではあるがデータ損失やシステムおよび機器の損傷には関連しない情報を表します。
重要
この表記は、データ損失やシステムおよび機器の損傷を回避するために必要な情報を表します。
参考
この表記は、参照先の情報の場所を表します。
また、本書では以下の表記法を使用します。
表記 |
使用方法 |
例 |
---|---|---|
[ ] 角かっこ |
コマンド名の前後
画面に表示される語(ダイアログボックス、メニューなど)の前後
|
[スタート]をクリックします。
[プロパティ]ダイアログ ボックス
|
コマンドライン中の [ ] 角かっこ |
かっこ内の値の指定が省略可能であることを示します。 |
|
モノスペースフォント |
パス名、コマンドライン、システムからの出力(メッセージ、プロンプトなど)、ディレクトリ、ファイル名、関数、パラメータ |
|
太字 |
ユーザが実際にコマンドプロンプトから入力する値を示します。 |
以下を入力します。
clpcl -s -a
|
|
ユーザが有効な値に置き換えて入力する項目 |
|
本書の図では、CLUSTERPROを表すために このアイコンを使用します。
1.3. CLUSTERPRO マニュアル体系¶
CLUSTERPRO のマニュアルは、以下の 5 つに分類されます。各ガイドのタイトルと役割を以下に示します。
『CLUSTERPRO X スタートアップガイド』 (Getting Started Guide)
すべてのユーザを対象読者とし、製品概要、動作環境、アップデート情報、既知の問題などについて記載します。
『CLUSTERPRO X インストール&設定ガイド』 (Install and Configuration Guide)
CLUSTERPRO を使用したクラスタシステムの導入を行うシステムエンジニアと、クラスタシステム導入後の保守・運用を行うシステム管理者を対象読者とし、CLUSTERPRO を使用したクラスタシステム導入から運用開始前までに必須の事項について説明します。実際にクラスタシステムを導入する際の順番に則して、CLUSTERPRO を使用したクラスタシステムの設計方法、CLUSTERPRO のインストールと設定手順、設定後の確認、運用開始前の評価方法について説明します。
『CLUSTERPRO X リファレンスガイド』 (Reference Guide)
管理者、および CLUSTERPRO を使用したクラスタシステムの導入を行うシステムエンジニアを対象とし、CLUSTERPRO の運用手順、各モジュールの機能説明およびトラブルシューティング情報等を記載します。『CLUSTERPRO X インストール&設定ガイド』を補完する役割を持ちます。
『CLUSTERPRO X メンテナンスガイド』 (Maintenance Guide)
管理者、および CLUSTERPRO を使用したクラスタシステム導入後の保守・運用を行うシステム管理者を対象読者とし、CLUSTERPRO のメンテナンス関連情報を記載します。
『CLUSTERPRO X ハードウェア連携ガイド』 (Hardware Feature Guide)
管理者、および CLUSTERPRO を使用したクラスタシステムの導入を行うシステムエンジニアを対象読者とし、特定ハードウェアと連携する機能について記載します。『CLUSTERPRO X インストール&設定ガイド』を補完する役割を持ちます。
2. SAP HANA クラスタ概要¶
2.1. 概要¶
2.2. 動作環境¶
x86_64
HANA Version
CLUSTERPRO Version
OS
SAP HANA 1.0 SPS11SAP HANA 1.0 SPS123.3.0-1~4.0.0-1~4.1.0-1~Red Hat Enterprise Linux 7.2Red Hat Enterprise Linux 7.3SUSE LINUX Enterprise Server 11 SP4SAP HANA 2.0 SPS03
4.1.0-1~4.2.0-1~Red Hat Enterprise Linux 7.2
2.3. 動作イメージ¶
2.4. サポートシナリオと前提条件¶
スケールアップ(シングル)構成×2の2ノードクラスタ
性能面において両ノードは、同じネットワークセグメントに属していることを推奨。AWS環境の場合、Single-AZを推奨。
両ノードは、シングルインスタンスで実行されているものとし、品質保証機や開発機が動作していないこと
SAP HANAの自動起動はオフに設定しておくこと
マルチテナントデータベースコンテナ(MDC)シナリオ
System Database / Tenant Databasesのいずれかに障害が出た際にフェイルオーバを実施
Tenant Databaseのマニュアル停止では、フェイルオーバは未実施
3. AWS環境¶
CIDR |
10.0.0.0/16 |
Subnet-1A |
10.0.1.0/24 |
Subnet-2A |
10.0.2.0/24 |
Instance (ERP) |
10.0.2.100/24 |
Instance (Server1) |
10.0.2.22/24 |
Subnet-1B |
10.0.11.0/24 |
Subnet-2B |
10.0.12.0/24 |
Instance (Server2) |
10.0.12.22/24 |
VIP |
10.2.0.20/32 |
本書では、インスタンスをAWSの異なるAZ上に配置してSAP HANAをインストールし、クラスタ環境を構築します。
SAP NOTE
#1964437 - SAP HANA on AWS: Supported AWS EC2 products
#1656099 - SAP Applications on AWS: Supported DB/OS and AWS EC2 products
また、SAP HANAについては、SAP Instannce上に複数のテナントデータベースを作成する構成についても検証を行っています。
SAP HANA(共通)
リージョン
アジアパシフィック(東京)
OS
SUSE Linux Enterprise Server 11 SP4Red Hat Enterprise Linux 7.4Instance Type
x1.32xlarge
CPU
128vCPU
メモリ
2TB
EBS
/dev/sda1 50GB/dev/sdf 4096 GB/dev/sdb 1024GB/dev/sdc 1024GB/dev/sdd 1024GB/dev/sde 1024GB/dev/sds 50 GB/dev/sdz 50 GBEIP
-
SAP HANA
SAP HANA 1.0 SPS12
クラスタ環境へのアクセスを制御するためのNAT GatewayはそれぞれのAZに配置します。SAP ERP Application Serverとして、AZ内(どちらでも可)に配置します。
SAP ERP
リージョン
アジアパシフィック(東京)
OS
Windows Server 2012 R2
Instance Type
m4.2xlarge
CPU
8vCPU
メモリ
32GB
EBS
/dev/sda1 100GB/dev/sdb 50GB/dev/sdc 100GBEIP
-
SAP ERP
SAP ERP 6.0 EHP7 SR1
4. SAP HANAのインストールおよび設定¶
SAP HANAのインストールおよび設定については、以下のドキュメントを参照してください。
https://help.sap.com/viewer/product/SAP_HANA_PLATFORM/1.0/en-US
SAP HANA Server Installation and Update Guide
SAP HANA Administration Guide
SAP HANA Master Guide
https://help.sap.com/viewer/product/SAP_HANA_PLATFORM/2.0.03/en-US
SAP HANA Server Installation and Update Guide
SAP HANA Administration Guide
SAP HANA Master Guide
5. CLUSTERPROのインストールおよび設定¶
CLUSTERPROのインストールおよび設定については、『CLUSTERPRO X SingleServerSafe for Windows インストール&設定ガイド』を参照してください。
5.1. CLUSTERPROのインストール¶
CLUSTERPROのインストール後、以下のコマンドを実行しサンプルスクリプトをインストールしてください。
# rpm -i clusterpro_spnw-<Version of CLUSTERPRO>.x86_64.rpm
メディアに同梱されているサンプルスクリプトは、以下のディレクトリ配下に格納しています。
media/Linux/<Version of CLUSTERPRO>/common/hana/sample
ファイル名 |
用途 |
---|---|
start_hana_primary_sample.sh |
グループリソース exec_primary_hana 用 |
stop_hana_primary_sample.sh |
グループリソース exec_primary_hana 用 |
start_hana_secondary_sample.sh |
グループリソース exec_secondary_hana 用 |
stop_hana_secondary_sample.sh |
グループリソース exec_secondary_hana 用 |
genw_hana_primary_status_sample.sh |
モニタリソース genw_primary_hana_status用 |
genw_hana_secondary_status_sample.sh |
モニタリソース genw_secondary_hana_status用 |
5.2. ライセンスの登録¶
本製品は、以下のライセンスが含まれています。
ライセンス製品名 |
---|
CLUSTERPRO X for Linux |
CLUSTERPRO X Database Agent for Linux |
CLUSTERPRO X File Server Agent for Linux |
CLUSTERPRO X System Resource Agent for Linux |
5.3. クラスタの作成¶
ネットワーク設定として、以下を登録します。
用途 |
経路数 |
説明 |
---|---|---|
インタコネクトLAN
(パブリックLAN兼用)
|
1 |
HAクラスタを構成するサーバ間で、互いの死活監視やクラスタ情報の交換に使用 |
5.4. フェイルオーバグループの作成¶
以下のフェイルオーバグループを登録します。
グループ種別 |
説明 |
---|---|
プライマリ用フェイルオーバグループ(failover_PRI) |
プライマリサーバで起動するフェイルオーバグループ
SAP HANAをプライマリとして起動/停止します。また、SAP HANAにアクセスするための仮想IPを起動/停止します。
|
セカンダリ用フェイルオーバグループ(failover_SEC) |
セカンダリサーバで起動するフェイルオーバグループ
SAP HANAをセカンダリとして起動/停止します。failover_PRIと同一サーバで起動する場合は、SAP HANAの起動/停止は行いません。
|
5.5. グループリソースの追加¶
リソース種別(グループリソース名) |
フェイルオーバグループ |
説明 |
---|---|---|
AWS仮想IPリソース(awsvip) |
failover_PRI |
現用系側(プライマリサーバ)のインスタンスへの SAP HANA にアクセスするための仮想 IP アドレスの付与、および、その IP アドレスに対するルートテーブルの変更を行い、業務を同じ VPC 内に公開します。 |
プライマリ制御用EXECリソース(exec_primary_hana) |
failover_PRI |
SAP HANAをプライマリとして起動/停止するためのスクリプトを実行します。SAP HANAが既にセカンダリとして起動していた場合は、SAP HANAをプライマリに変更します。 |
セカンダリ制御用EXECリソース(exec_secondary_hana) |
failover_SEC |
SAP HANAをセカンダリとして起動/停止するためのスクリプトを実行します。「failover_PRI」グループと同ノードで起動した場合は、full sync optionを無効にします。 |
5.6. モニタリソースの追加¶
次にモニタリソースを登録します。
モニタリソースの登録方法については、以下のドキュメントおよびCluster WebUIのオンラインマニュアルを参照してください。
モニタ種別(モニタリソース名) |
説明 |
プライマリ |
セカンダリ |
---|---|---|---|
プライマリ監視用カスタムモニタ(genw_primary_hana_status) |
プライマリのSAP HANAの状態を監視します。
監視には、"landscapeHostConfiguration.py"コマンドを実行します。
|
✓ |
|
セカンダリ監視用カスタムモニタ(genw_secondary_hana_status) |
セカンダリのSAP HANAの状態を監視します。
監視には、"landscapeHostConfiguration.py "コマンドを実行します。
|
✓ |
|
Availability Zone監視用AWS AZモニタ(awsazw) |
Multi-AZ(Availability Zone)を利用し、自サーバが属するAZの健全性を定期的に監視します。
Multi-AZ を利用しない場合でも、AWS CLI の利用可否を監視する目的で使用することが可能です。
|
✓ |
✓ |
AWS仮想IP監視用AWS仮想IPモニタ(awsvipw) |
AWS 仮想 IP リソースが付与した仮想 IP アドレスが自サーバに存在するか、および VPC のルートテーブルが不正に変更されていないかを定期的に監視します。(AWS 仮想IP リソースを追加すると自動的に追加されます。) |
✓ |
✓ |
6. SAP ERPのインストールおよび設定¶
7. 注意・制限事項¶
フェイルオーバグループの起動完了後かつSAP HANAのfull sync optionを有効に変更する前に障害が発生した場合、データコピー完了前にフェイルオーバが発生し、データロスが発生する可能性があります。
プライマリ用フェイルオーバグループは、必ずミラーディスクの最新データを保有しているサーバで起動してください。フェイルオーバ発生後など、プライマリサーバとセカンダリサーバで更新差分が発生する場合があります。プライマリサーバで最新データを保持している場合に、セカンダリサーバでプライマリ用フェイルオーバグループ、プライマリサーバでセカンダリ用フェイルオーバグループを起動すると、プライマリサーバへデータ同期が行われ、データロスが発生します。
- データ同期(System Replication)についてSAP HANAのシステムレプリケーションにおいては、同期モード(Synchronous)であっても実障害時にはデータロスの可能性があります。「SAP Note 2063657 - HANA System Replication takeover decision guideline」にて、データロスの有無を考慮した切り替え判断基準が記載されており、切り替え前にオペレータによる手動での確認が必要となります。NECでは、同期モードにおいてfull sync optionを採用し、CLUSTERPROと合わせて活用することにより、データロスの可能性を排除し、これを推奨方式としています。
8. 付録¶
8.1. 詳細設定¶
本書のCLUSTERPROの設定例を以下に記載します。
クラスタ構成
設定パラメータ
設定値
クラスタ名
cluster
サーバ数
2
フェイルオーバグループ数
2
ハートビートリソース
LANハートビート数
1
Node#1(マスタサーバ)サーバ名
hana01
インタコネクトのIPアドレス(カーネルモード、優先度1)10.0.2.22
Node#2
サーバ名
hana02
インタコネクトのIPアドレス(カーネルモード、優先度1)10.0.12.22
1個目のグループ
設定パラメータ
設定値
タイプ
フェイルオーバ
グループ名
failover_PRI
起動サーバ
全てのサーバでフェイルオーバ可能
グループ起動属性
手動起動
フェイルオーバ属性
自動フェイルオーバ起動可能なサーバ設定に従うフェイルバック属性
手動フェイルバック
フェイルオーバ排他属性
排他なし
起動待ち合わせ
-
グループリソース数
2
1個目のグループリソース深度 0タイプ
AWS仮想IPリソース
グループリソース名
awsvip
活性異常検出時の復旧動作
活性リトライしきい値 0フェイルオーバしきい値 1何もしない(次のリソースを活性しない)非活性異常検出時の復旧動作
非活性リトライしきい値 0クラスタサービス停止とOSシャットダウンvpc-id
vpc-xxxxxxxx
eni-id(ノード#1)
eni-yyyyyyyy
eni-id(ノード#2)
eni-zzzzzzzz
2個目のグループリソース深度 1タイプ
EXECリソース
グループリソース名
exec_primary_hana
開始スクリプトタイムアウト
1800 秒 1
終了スクリプトタイムアウト
1800 秒 1
依存関係
awsvip
活性異常検出時の復旧動作
活性リトライしきい値 0フェイルオーバしきい値 1何もしない(次のリソースを活性しない)非活性異常検出時の復旧動作
非活性リトライしきい値 0クラスタサービス停止とOSシャットダウン詳細
スクリプト一覧Start script / start.shStop script / stop.sh2個目のグループ
設定パラメータ
設定値
タイプ
フェイルオーバ
グループ名
failover_SEC
起動サーバ
全てのサーバでフェイルオーバ可能
グループ起動属性
手動起動
フェイルオーバ属性
自動フェイルオーバ起動可能なサーバ設定に従うフェイルバック属性
手動フェイルバック
起動待ち合わせ
failover_PRI
グループリソース数
1
3個目のグループリソース深度 0タイプ
EXECリソース
グループリソース名
exec_secondary_hana
活性異常検出時の復旧動作
活性リトライしきい値 0フェイルオーバしきい値 1何もしない(次のリソースを活性しない)非活性異常検出時の復旧動作
非活性リトライしきい値 0
クラスタサービス停止とOSシャットダウン
詳細
スクリプト一覧Start script / start.shStop script / stop.sh1個目のモニタリソース(デフォルト作成)
設定パラメータ
設定値
タイプ
ユーザ空間モニタ
モニタリソース名
userw
2番目のモニタリソース
設定パラメータ
設定値
タイプ
AWS仮想IPモニタ
モニタリソース名
awsvipw
監視対象
awsvip
インターバル
60秒
タイムアウト
60秒
リトライ回数
3回
回復動作
回復対象に対してフェイルオーバ実行
回復対象
awsvip
最終動作
クラスタサービス停止とOSシャットダウン
3個目のモニタリソース
設定パラメータ
設定値
タイプ
カスタムモニタ
モニタリソース名
genw_primary_hana_status
インターバル
30 秒
タイムアウト
120 秒
リトライ回数
3 回
監視開始待ち時間
0 秒
監視タイミング
活性時対象リソース:exec_primary_hanaこの製品で作成したスクリプト
genw.sh
正常な戻り値
0
回復動作
回復対象に対してフェイルオーバ実行
回復対象
failover_PRI
最終動作
何もしない
4個目のモニタリソース
設定パラメータ
設定値
タイプ
カスタムモニタ
モニタリソース名
genw_secondary_hana_status
インターバル
30 秒
タイムアウト
120 秒
リトライ回数
3 回
監視開始待ち時間
0 秒
監視タイミング
活性時対象リソース:exec_secondary_hanaこの製品で作成したスクリプト
genw.sh
正常な戻り値
0
回復動作
回復対象に対してフェイルオーバ実行
回復対象
failover_PRI
最終動作
何もしない
5個目のモニタリソース
設定パラメータ
設定値
タイプ
AWS AZモニタ
モニタリソース名
awsazw
インターバル
60 秒
タイムアウト
120 秒
リトライ回数
0 回
監視開始待ち時間
0 秒
監視タイミング
常時
アベイラビリティゾーン
ap-northeast-1a, ap-northeast-1c
回復動作
回復対象に対してフェイルオーバ実行
回復対象
All Groups
最終動作
何もしない
8.2. 操作手順¶
クラスタの起動手順と障害発生時の復旧手順を以下に記載します。
起動手順
サーバ#1をプライマリサーバ、サーバ#2をセカンダリサーバとして運用します。プライマリ用フェイルオーバグループをサーバ#1、セカンダリ用フェイルオーバグループをサーバ#2で起動します。(サーバ#1でSAP HANAがプライマリとして起動、サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動されます。)フェイルオーバグループの起動完了後、サーバ#1上でコマンドを手動で実行しSAP HANAのfull sync optionを有効に変更します。注釈
full sync optionを有効に変更する前に障害が発生した場合、データコピー完了前にフェイルオーバが発生し、データロスが発生する可能性があります。
プライマリサーバの障害発生
サーバ#1で障害が発生すると、プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2へフェイルオーバします。サーバ#1ではSAP HANAが停止、サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続します。
復旧手順
セカンダリ用のフェイルオーバグループをサーバ#2からサーバ#1へ手動フェイルオーバします。フェイルオーバが発生すると、サーバ#1でSAP HANAがセカンダリとして起動します。フェイルオーバ完了後、サーバ#2でコマンドを手動で実行しSAP HANAのfull sync optionを有効に変更します。
セカンダリサーバの障害発生時
サーバ#2で障害が発生すると、セカンダリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1へフェイルオーバします。サーバ#2でSAP HANAが停止し、サーバ#1でSAP HANAのfull sync optionを無効にし、運用を継続します。
復旧手順
セカンダリ用のフェイルオーバグループをサーバ#1からサーバ#2へ手動フェイルオーバします。フェイルオーバが発生すると、サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動します。フェイルオーバ完了後、サーバ#1でコマンドを手動で実行しSAP HANAのfull sync optionを有効に変更します。注釈
プライマリ用フェイルオーバグループは、必ず最新データを保有しているサーバで起動してください。フェイルオーバ発生後など、プライマリサーバとセカンダリサーバで更新差分が発生する場合があります。プライマリサーバで最新データを保持している場合に、セカンダリサーバでプライマリ用フェイルオーバグループ、プライマリサーバでセカンダリ用フェイルオーバグループを起動すると、プライマリサーバへデータ同期が行われ、データロスが発生します。
8.3. 確認結果¶
項目 |
操作 |
確認結果 |
---|---|---|
クラスタの開始 |
Cluster WebUI でクラスタを開始させる。
Cluster WebUI プライマリ用のフェイルオーバグループをサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループをサーバ#2で起動させる。
|
クラスタが開始すること。
プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2で起動すること。
サーバ#1でSAP HANAがプライマリとして起動すること。サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
クラスタの停止 |
Cluster WebUI でクラスタを停止させる。 |
クラスタが停止すること。
サーバ#1、サーバ#2でSAP HANAが停止すること。
|
クラスタの再開始 |
Cluster WebUI プライマリ用のフェイルオーバグループをサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループをサーバ#2で起動させる。 |
クラスタが開始すること。
プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2で起動すること。
サーバ#1でSAP HANAがプライマリとして起動すること。サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
サーバ#1のシャットダウン |
Cluster WebUI でサーバ#1をシャットダウンさせる。 |
サーバ#1でSAP HANAが停止後にシャットダウンすること。
プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1からサーバ#2へフェイルオーバすること。
(サーバ#1でSAP HANAが停止。サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する)
|
サーバ#1の復帰 |
サーバ#1を起動させる。 |
サーバ#1が起動し、クラスタに復帰すること。 |
SAPフェイルオーバグループの移動 |
Cluster WebUI でサーバ#2からサーバ#1へセカンダリ用のフェイルオーバグループを移動させる。 |
サーバ#2からサーバ#1へセカンダリ用のフェイルオーバグループが移動すること。
サーバ#1でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
サーバ#1のシャットダウン |
Cluster WebUI でサーバ#1をシャットダウンさせる。 |
サーバ#1がSAP HANAの停止後にシャットダウンすること。
セカンダリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1からサーバ#2へフェイルオーバすること。
(サーバ#1でSAP HANAが停止。サーバ#2でSAP HANAの運用を継続する)
|
サーバ#1の復帰 |
サーバ#1を起動させる |
サーバ#1が起動し、クラスタに復帰すること。 |
SAPフェイルオーバグループの移動 |
Cluster WebUI でサーバ#2からサーバ#1へセカンダリ用のフェイルオーバグループを移動させる。 |
サーバ#2からサーバ#1へセカンダリ用のフェイルオーバグループが移動すること。
サーバ#1でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
サーバ#2のシャットダウン |
Cluster WebUI でサーバ#2をシャットダウンさせる。 |
サーバ#2でSAP HANAが停止後にシャットダウンすること。
プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2からサーバ#1へフェイルオーバすること。
(サーバ#1でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する)
|
サーバ#2の復帰 |
サーバ#2を起動させる |
サーバ#2が起動し、クラスタに復帰すること。 |
SAPフェイルオーバグループの移動 |
Cluster WebUI でサーバ#1からサーバ#2へセカンダリ用のフェイルオーバグループを移動させる。 |
サーバ#1からサーバ#2へセカンダリ用のフェイルオーバグループが移動すること。
サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
サーバ#2のシャットダウン |
Cluster WebUI でサーバ#2をシャットダウンさせる。 |
サーバ#2でSAP HANAが停止後にシャットダウンすること。
プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2からサーバ#1へフェイルオーバすること。
(サーバ#1でSAP HANAの運用を継続する)
|
サーバ#2の復帰 |
サーバ#2を起動させる |
サーバ#2が起動し、クラスタに復帰すること。 |
SAPフェイルオーバグループの移動 |
Cluster WebUI でサーバ#1からサーバ#2へセカンダリ用のフェイルオーバグループを移動させる。 |
サーバ#1からサーバ#2へセカンダリ用のフェイルオーバグループが移動すること。
サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
クラスタのリブート |
Cluster WebUI でクラスタをリブートさせる。
リブート後、Cluster WebUI プライマリ用のフェイルオーバグループをサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループをサーバ#2で起動させる。
|
クラスタがリブートすること。
サーバ#1、サーバ#2でSAP HANAが停止すること。
サーバ#1、サーバ#2のリブート後、プライマリ用のフェイルオーバグループがサーバ#1で起動、セカンダリ用のフェイルオーバグループがサーバ#2で起動すること。
サーバ#1でSAP HANAがプライマリとして起動すること。サーバ#2でSAP HANAがセカンダリとして起動すること。
|
クラスタのサスペンド |
Cluster WebUI でクラスタをサスペンドする |
クラスタがサスペンドすること。
SAP HANAは起動を継続すること。
|
クラスタのレジューム |
Cluster WebUI でクラスタをレジュームする |
クラスタがレジュームすること。
SAP HANAは起動を継続すること。
|
ハードウェアやソフトウェア障害を想定して以下のコンポーネントに対し擬似障害を発生させ、いずれの動作も問題ないことを確認しています。
AWS環境
項目
操作
確認結果
Availability Zone障害AWS AZモニタ(awsazw)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#1で疑似障害(検証モード)を発生させる
異常を検出しプライマリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#1でSAP HANAが停止。サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する) Availability Zone障害AWS AZモニタ(awsazw)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#2で疑似障害(検証モード)を発生させる
異常を検出しセカンダリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#2でSAP HANAが停止。サーバ#1でSAP HANAのfull sync optionを無効にし、運用を継続する)
ネットワーク
項目
操作
確認結果
ネットワーク障害(プライマリ)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#1でネットワーク障害を発生させる。(AWSコンソールでサーバ#1のサブネットに関するNetworkACL を変更し、全ての通信を遮断する)
NP解決によりサーバ#1がシャットダウンすること。プライマリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する) ネットワーク障害(セカンダリ)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#2でネットワーク障害を発生させる。(AWSコンソールでサーバ#2のサブネットに関するNetworkACL を変更し、全ての通信を遮断する)
NP解決によりサーバ#2がシャットダウンすること。セカンダリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#1でSAP HANAのfull sync optionを無効にし、運用を継続する)
OS
項目
操作
確認結果
サーバの死活監視(プライマリ) サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#1を停止する。(shutdown -n -r now コマンドを実行する) プライマリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する) サーバの死活監視(セカンダリ) サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#2を停止する。(shutdown -n -r now コマンドを実行する) セカンダリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#1でSAP HANAのfull sync optionを無効にし、運用を継続する)
SAP HANA
項目
操作
確認結果
カスタムモニタ(genw_primary_hana_status)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#1でSAP HANAプロセス(Indexserver)を停止する。(kill -9)
異常を検出しプライマリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること。(サーバ#1でSAP HANAが停止。サーバ#2でSAP HANAのTakeoverが実行され、運用を継続する) カスタムモニタ(genw_secondary_hana_status)サーバ#1がプライマリ、サーバ#2がセカンダリの状態で、サーバ#2でSAP HANAプロセス(Indexserver)を停止する。(kill -9)
異常を検出しセカンダリ用のフェイルオーバグループがフェイルオーバすること(サーバ#2でSAP HANAが停止。サーバ#1でSAP HANAのfull sync optionを無効にし、運用を継続する)