VM配置制約機能とは、仮想マシンに対して、VM移動操作、最適配置機能、および、最適起動機能による移動を制約する機能です。
VMwareのvSphere HA機能 (High Availability)、vSphere DRS機能 (Distributed Resource Scheduler)、Windows Server Failover Clustering (WSFC) によるフェールオーバーなど、仮想化基盤製品が提供する仮想マシンの自動移動の機能に対して、VM配置制約機能は移動を制約することはできません。
VM配置制約機能には、次の4種類の制約があります。
Pin制約
EQ制約
NE制約
Hold制約
Pin制約は、特定の仮想マシンを特定のホストに結び付けて稼動させることができます。 Pin制約を使用するにあたり、以下のような設計を行うことにより、ハードウェア障害による共倒れを防止するなどの運用が可能となります。
特定の業務に関連する仮想マシンを1台のホストに集約する
同時停止を回避したい仮想マシンを異なるホストに結び付ける
EQ制約は、特定の仮想マシンを別の特定の仮想マシンに結び付けて稼動させることができます。EQ制約を使用することで、WebサーバとAPサーバのように、密接に関係する複数台の仮想マシンを同一のホスト上で実行する運用が可能となります。
NE制約は、複数の仮想マシンを互いに異なる仮想マシンサーバ上で稼動させることができます。NE制約を使用することで、クラスタ構成の仮想マシンのように、同一の仮想マシンサーバ上で動作させるべきでない仮想マシン群を、互いに異なる仮想マシンサーバ上で実行する運用が可能となります。
Hold制約は、特定の仮想マシンを現在所属しているホストに固定して稼動させることができます。Hold制約を使用することで、仮想マシンを最適起動/配置による移動対象から除外することができます。
VM配置制約機能を有効とするか、また有効とした場合にどのような制約を行うかの指定は、マシン種別がVMサーバのグループまたはモデル単位に設定できます。
なお、仮想マシンサーバがモデルに割り当てられている場合、モデルに設定された制約のみが有効になります。 グループに設定された制約は、グループに直接割り当てられた仮想マシンサーバに対してのみ有効であり、モデルに割り当てられた仮想マシンサーバには適用されません。
SigmaSystemCenterの最適配置、および最適起動機能が仮想マシンの移動を行う場合、その移動先は、仮想マシンが所属する仮想マシンサーバと同じグループ、および、モデルに割り当てられている仮想マシンサーバの中から選択されます。仮想マシンが所属する仮想マシンサーバが、グループに直接割り当てられている場合、同じグループに所属し、モデルに割り当てられていない仮想マシンサーバの中から選択されます。
通常、移動先の選択は最適配置 / 最適起動機能により自動的に行われ、ユーザが制御することはできませんが、VM配置制約機能を利用することで、移動先の選択に制限を加えることができます。
VM配置制約は、電源がオンの仮想マシン、および、起動操作が実施される仮想マシンに対して有効となります。 このため、停止中の仮想マシンを起動せずに移動を行う場合、VM配置制約機能による制限を受けません。 最適起動が有効な場合、このような仮想マシンは起動操作時に配置制約が適用されます。
最適配置機能、および、最適起動機能は、制約が有効な場合に限り、設定された制約に従って移動先を決定します。また、VM移動操作では、制約が有効であり、また、移動先として制約を満たさないホストを指定した場合には移動を行いません。
VM配置制約機能による制約は、複数台のマシン間による制約であり、指定はホスト、もしくは、複数のホストによる制約グループ設定に対して行います。このため、マシンの置換などにより、仮想マシンや仮想マシンサーバが変更された場合にも、制約は維持されます。
VM配置制約機能と最適配置/起動機能は競合する機能であるため、制約を行った場合、最適配置 / 最適起動機能の効率や処理速度に影響を与える可能性があります。このため、過剰な設定を行うことは避け、必要な範囲でのみ設定するように注意してください。仮想マシンサーバ上に多くの仮想マシンを運用する環境において、すべての仮想マシンに対して制約を設定するような運用は推奨しません。
1つのグループ/モデルあたりに設定可能な制約は、2ホスト間の関係に換算して5000個までとなります。 各制約に対し、ホスト間の関係数は以下のとおりです。
制約種別 | 制約対象 | 制約先 | 関係数 |
---|---|---|---|
Pin制約 | ホスト | ホスト | 1 |
Pin制約 | VM制約グループ | ホスト | VM制約グループに所属するホスト数 |
Pin制約 | ホスト | VMサーバ制約グループ | VMサーバ制約グループに所属するホスト数 |
Pin制約 | VM制約グループ | VMサーバ制約グループ | (VM制約グループに所属するホスト数)×(VMサーバ制約グループに所属するホスト数) |
EQ, NE制約 | VM制約グループ | - | VM制約グループに所属するホスト数 - 1 |
Hold制約 | ホスト | - | 1 |
Hold制約 | VM制約グループ | - | VM制約グループに所属するホスト数 |
いずれの場合においても、関係数は1以上となります。
たとえば、VMが1台のVM制約グループに対するEQ制約は、0ではなく1となります。
VM配置制約の設定は、Webコンソール、もしくは、sscコマンドから行います。 Hold制約については、sscコマンドからのみ設定することが可能です。
Webコンソールによる設定については、「SigmaSystemCenter リファレンスガイド Web コンソール編」を参照してください。
sscコマンドによる設定については、「ssc コマンドリファレンス」を参照してください。