3.6. ロール

ロールとは、ユーザ/グループが持つ役割の事です。ユーザ/グループに対してロールを付与することにより、そのユーザ/グループが実行できる処理を限定したり、アクセスできるデータを制御したりできます。

3.6.1. ユーザ・グループ・ロールの関係

ユーザは共通の特性によってグループ単位に分けることができます。複数のユーザをグループとしてまとめることで、ユーザの管理がしやすくなります。 また、ロールはユーザ個人、またはグループに付与することができます。 グループにロールを付与することは、そのグループに所属しているユーザ全員に同じロールを付与することと同じことになります。

例えば勤務管理システムでは、利用者(ユーザ、図ではA,B,C)は全員、Employee(従業員)というグループに所属していなければなりません。Employeeグループには毎日の勤務時間の登録、変更を行うことができるロールであるcommonというロールが付与されています。commonに加えて、管理職であるCにはManagerというロールが付与されていて、勤務時間の登録、変更に加えて、承認作業を行うことができます。


3.6.2. 運用管理ユーザのロール

運用管理ユーザは、ロール機能を利用することで、グループ毎に運用管理操作の実行制限、ユーザ情報へのアクセスを制限することができます。

例えば、ユーザ管理をするユーザは、userManager(ユーザ管理者)というグループに所属させます。 そのuserManagerグループに対して、ユーザ管理に必要な運用管理操作を登録したロールを付与することで、そのユーザはユーザ管理操作を実施することが可能になります。

なお、運用管理ユーザのロールは設定値の閲覧や運用管理コマンド(ローカルコマンド)の実行は制限しません。 そのため、ロールを付与されていないグループのユーザは、統合運用管理ツールや、getコマンド、listコマンドを利用しての設定値の閲覧、ローカルコマンドの実行は可能です。

3.6.2.1. 既存のロール

WebOTXでは、業務内容に合わせて利用できるよう、あらかじめ以下のロールを用意しています。

各ロールの詳細は以下の通りです。なお、「実行できる運用管理操作」、「実行できる運用管理コマンド」の行に括弧で記載されている単語は、 実際に設定されている値です。これらの値については、[ロールの設定追加] に記載します。

administratorロール設定一覧
ロール名 administrator
概要 すべての運用管理操作を実行できるロール
ロールが存在するドメイン 管理ドメイン、ユーザドメイン
グループ名 otxadmin
実行できる運用管理操作 すべての運用管理操作(all)
実行できる運用管理コマンド すべての運用管理コマンド
deployerロール設定一覧
ロール名 deployer
概要 アプリケーションを配備するユーザ向けのロール
ロールが存在するドメイン ユーザドメイン
グループ名 -
実行できる運用管理操作 統合運用管理ツールの「アプリケーション」ノード配下で実行できる操作 (applications)
実行できる運用管理コマンド deploy
undeploy
deploydir
replace
list-components
list-sub-components
show-component-status
enable
disable
change-admin-password
set
invoke
userManagerロール設定一覧
ロール名 userManager
概要 ユーザ管理に関連する操作権限を持つロール
ロールが存在するドメイン 管理ドメイン、ユーザドメイン
グループ名 -
実行できる運用管理操作 ファイルユーザの追加・削除・一覧確認・設定変更
運用管理ユーザのロール設定
ロックアウト機能の設定
ユーザのロックアウト解除
実行できる運用管理コマンド create-file-user
delete-file-user
update-file-user
list-file-users
list-file-groups
change-admin-password
create-custom-role
delete-custom-role
list-roles
add-custom-role-config
delete-custom-role-config
list-admin-users
unlock-user
set
invoke
domainManagerロール設定一覧
ロール名 domainManager
概要 ドメインの追加・削除・設定変更権限を持つロール
ロールが存在するドメイン 管理ドメイン
グループ名 -
実行できる運用管理操作 ユーザドメインの作成・削除
ユーザドメインの起動順序の変更・確認
ユーザドメインの起動・停止・状態確認
実行できる運用管理コマンド start-domain(※)
stop-domain(※)
create-domain
delete-domain
set-start-order
list-start-orders
list-domains(※)
change-admin-password
set
invoke
domainOperatorロール設定一覧
ロール名 domainOperator
概要 ドメインの運用に関連する操作権限を持つロール
ロールが存在するドメイン 管理ドメイン
グループ名 -
実行できる運用管理操作 ユーザドメインの起動・停止・状態確認
実行できる運用管理コマンド start-domain(※)
stop-domain(※)
list-domains(※)
change-admin-password
set
invoke

※これらのコマンドは、管理ドメインにログインし--remoteオプションを利用して実行した場合に限り、ロールによる操作実行制限の対象になります。

上記の既存ロールの「グループ名」、「実行できる運用管理操作」や「実行できる運用管理コマンド」は、必要に応じて追加・削除することができます。 これらの設定方法は[ロールの設定追加] 、または[ロールの設定削除]を参照してください。

また、既存ロールとは別に全く新しいロールを作成することもできます。新規ロールの作成方法については[カスタムロールの追加] を参照してください。

3.6.2.2. 設定方法

ロール関連の設定権限をもつロールは、administratorロールとuserManagerロールの2つです。既定では、adminユーザがotxadminグループに所属し、 admnistratorロールを付与されています。

Caution ロール機能を有効化すると、administratorロールまたはuserManagerロールを付与されていない運用管理ユーザは、ロール機能の設定を行うことができなくなります。 そのため、ロール関連の設定を行う場合は、いずれかのロールを付与されたユーザで実施してください。
運用管理コマンドから設定
ロール機能の有効化/無効化

ロール機能を有効化するためには、以下のコマンドを実行します。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > set server.admin-service.role-manager.enabled=true

ロール機能の設定が既定値の状態からロール機能を有効化すると、otxadminグループに所属する運用管理ユーザ(既定ではadminユーザのみ)にのみ、 すべての運用管理操作の実行権限が与えられた状態となります。

ロール機能を無効化するためには、以下のコマンドを実行します。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > set server.admin-service.role-manager.enabled=false
カスタムロールの追加

カスタムロールを追加するためには、以下のコマンドを実行します。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > create-custom-role <ロール名>

上記のコマンドでロールを作成後、[ロールの設定追加] を参照して、作成したカスタムロールの設定を行ってください。

カスタムロールの削除

カスタムロールを削除するためには、以下のコマンドを実行します。なお、既存のロールは削除することができません。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > delete-custom-role <ロール名>
ロールの設定追加

ロールに設定を追加するためには、以下のコマンドを実行します。同じ設定項目であれば、オペランドに複数の設定を指定することで一括で設定を追加することができます。 半角スペース区切りで複数の設定を指定してください。 このコマンドは、既存のロール、カスタムロール両方に対して設定変更を行うことができます。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > add-custom-role-config --role <ロール名> --kind <追加する設定項目> <追加する設定>

--kindオプションに指定できる値は、group、type、commandです。--kindオプションの<追加する設定項目>と<追加する設定>に指定する値の対応は以下の通りです。

--kindオプション 設定項目対応表
--kindオプション
<追加する設定項目>
変更できる設定名 <追加する設定>に指定できる値
group グループ名 運用管理ユーザが所属する任意のグループ名
type 実行できる運用管理操作 all
applications
domain
domainOperator
resources
server
tpsystem
users
command 実行できる運用管理コマンド 運用管理コマンド(ワイルドカード使用可)
ロールの設定削除

ロールに設定を削除するためには、以下のコマンドを実行します。同じ設定項目であれば、オペランドに複数の設定を指定することで一括で設定を削除することができます。 半角スペース区切りで複数の設定を指定してください。このコマンドは、既存のロール、カスタムロール両方に対して設定変更を行うことができます。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > delete-custom-role-config --role <ロール名> --kind <追加する設定項目> <追加する設定>
ロールの一覧表示

ロールの一覧を表示するには以下のコマンドを実行します。既存のロールを含めて、現在存在するロール名の一覧を表示します。

${AS_INSTALL}/bin/otxadmin
    otxadmin > login --user admin --password xxxxxx --port 6212
    otxadmin > list-roles
統合運用管理ツールから設定

ロール機能の設定はドメインが起動した状態で行います。ドメインが起動したら、統合運用管理ツールを起動し、ドメインに接続してください。

ロール機能の有効化/無効化

1. [ドメイン名]-[アプリケーションサーバ]-[管理サービス]-[ロール管理]をクリックします。



2. [ロール機能の有効化]のチェックボックスにチェックを入れ、[更新]ボタンを押します。



カスタムロールの追加

1. [ドメイン名]-[アプリケーションサーバ]-[管理サービス]-[ロール管理]を右クリックし、[カスタムロールの作成]をクリックします。



2. [ロール名]に作成するロールの名前を入力し、[実行]ボタンを押します。



カスタムロールの削除

1. [ドメイン名]-[アプリケーションサーバ]-[管理サービス]-[ロール管理]を右クリックし、[カスタムロールの削除]をクリックします。



2. [ロール名]に削除するロールの名前を入力し、[実行]ボタンを押します。既存のロールは削除することができません。



ロールの設定変更

1. [ドメイン名]-[アプリケーションサーバ]-[管理サービス]-[ロール管理]-[role]-${設定を変更するロール名}をクリックします。



2. それぞれの項目から設定を変更し、[更新]ボタンを押します。

ロールの一覧表示

1. [ドメイン名]-[アプリケーションサーバ]-[管理サービス]-[ロール管理]を右クリックし、[ロール一覧の表示]をクリックします。



2. [実行]ボタンを押します。



3. 結果にロール名の一覧が表示されます。



3.6.3. アプリケーションユーザのロール

アプリケーションのユーザについては、WebアプリケーションやEJBでは配備記述子を設定する事で、ユーザ/グループとロールのマッピングを行う事ができます。