1.4. ドメイン管理

WebOTX ではシステムをドメインという構成単位で管理を行います。まずはドメインの構成について説明します。

1.4.1. ドメインとは

WebOTX の基本的な構成単位をドメインと呼びます。このドメインはJMX 仕様で定義されているドメイン に対応します。

ドメインはWebOTX で管理するリソースやサービス群を論理的にグルーピングしています。 ドメインは独立して運用され、コンフィグレーション情報など構成情報はドメイン単位で独立したディレクトリに管理されます。

それぞれの業務システムの要件にあわせてドメインを構成することができます。 例えば1つのホストで商用環境と評価環境を構築したい場合、そのホスト上に商用のドメインと評価用のドメインを構成させることができます。 また稼動、待機構成のクラスタ構成を行いたい場合は、複数のホストで1つのドメインを定義できます。

1.4.2. ドメインの構成要素

ドメインを構成するモジュール群について説明します。 ドメインは主に、ドメイン情報を管理する運用管理エージェントとアプリケーションサーバとしての機能を提供するサービス群(以下の表で示します)で構成されます。

運用管理エージェントはそのドメイン内で動作するサービスやコンフィグレーションを管理します。 またリモートから運用操作が行えるためのインタフェースを外部に提供します。

サービスには次のものを提供しており、そのドメインで必要なサービスをドメイン作成時に指定します。

表 WebOTXが提供するサービス群
サービス名称ExpressStandardEnterprise
HTTPサーバ
Webコンテナ○(*1)○(*1)
EJBコンテナ○(*2)○(*2)
JNDIサービス
JMSサービス
CORBAサービス
Transactionサービス
TPモニタ×
WatchServer××

*1: Express のWebコンテナは運用管理エージェントのJava VM 内で動作します。 Standard および Enterprise の Webコンテナは運用管理エージェントとは独立したJava VM 上で動作します。 ただし従来どおり 運用管理エージェントのJava VM 内で動作させることも可能です。

*2: Express のEJBコンテナは運用管理エージェントのJava VM 内で動作します。 Standard および Enterprise のEJBコンテナは運用管理エージェントとは独立したJava VM 上で動作します。

1.4.3. ドメインのタイプ

WebOTXでは大きく2つのドメインにタイプ分けしています。

管理ドメイン

WebOTXをインストールした時点で、ホスト単位で1つ作成されます。 管理ドメインはそのホスト上で動作するユーザドメインの管理を行います。 管理ドメインを通して以下の操作を行うことができます。

  1. ユーザドメインの作成、削除
  2. ユーザドメインの起動、停止
  3. ユーザドメインの一覧取得
  4. ユーザドメインの依存関係の設定
ユーザドメイン

システム構成によってユーザが任意に作成するドメインです。 ドメイン作成時に、そのドメイン上で管理するリソースやサービスを任意に指定することができます (WebOTXのエディションにより指定できるリソースやサービスに制限されます)。 ユーザドメインでは、実際の業務システムを構成するアプリケーションやサービスが動作します。


1.4.4. ドメインの構成

業務システムのユーザドメインの構成について説明します。 ドメイン構成は大きく次の5つのグループに分割することができます(DBサーバについては省略します)。 これらについてそれぞれ独立したドメインに割り当てることも、同一のドメインに割り当てることも可能ですが、基本的な構成について次に説明します。

Expressドメイン

Expressで動作するサービスを1つのドメインで動作させます。 Java EEアプリケーションシステムを構築する上でもっともシンプルなドメイン構成です。 1台のマシンで全て動作させる場合やWeb層とAP層を分割する必要のない場合は通常 この構成となり以下のサービスが起動します。

マルチサーバ構成の場合、マシン単位でドメインを1つ作成し負荷分散装置により分散を行います。


Standard/Enterpriseドメイン

Standard/Enterpriseで動作するサービスを1つのドメインで動作させます。 システムを構築する上でもっともシンプルなドメイン構成です。 1台のマシンで全て動作させる場合やWeb層とAP層を分割する必要のない場合は 通常この構成となり以下のサービスが起動します。

マルチサーバ構成の場合、マシン単位でドメインを1つ作成し負荷分散装置により分散を行います。


Webサーバドメイン

Webサーバ層を構成するドメインでは次のサービスが動作します。

Webサーバはクラスタ化する場合、基本的にはマルチサーバ負荷分散構成となります。 さらに1つのマシンでは1つのWebサーバ、Webコンテナを動作させる構成が基本です。


また、パターンによっては1マシン内でWebサーバとWebコンテナが1対nになるような構成も可能です。 この場合はそれぞれ(Webサーバ、Webコンテナ)が独立したドメイン構成となります。


APサーバドメイン

APサーバ層を構成するドメインでは次のサービスが動作します。

APサーバ層のクラスタとしては負荷分散がメインですが、 稼動待機構成(シングルスタンバイ、相互スタンバイ)も用いられ、 また業務の特性に応じてマルチシステム構成となるため、柔軟な構成が望まれています。

負荷分散構成:


シングルスタンバイ構成:


相互スタンバイ構成:


マルチシステム構成:


名前サーバドメイン

名前サーバ層を構成するドメインでは次のサービスが動作します。

名前サーバ自身は、負荷分散クラスタなどの負荷を分散する構成にする必要はありませんが、 基本的にはシステムで1つの存在であるので、 SPOF(Single Point of Failure)とならないための対策が必要となります。 また名前サーバ専用にマシンを割り当てる構成は、 コスト的に敬遠されるためさまざまな箇所に配置されることが想定されます。