1. ダウンローダ環境について

ダウンローダは、クライアントマシンからWebブラウザのリンクをクリックすることにより、Webサーバからクライアントアプリケーションの取得を行うソフトウェアです。

この章では、ダウンローダを運用するためのソフトウェアの一群により構成された環境を「ダウンローダ環境」とし、ダウンローダ環境の構築に必要なソフトウェアの構成、および運用手順の概要について説明します。

1.1. ダウンローダ環境の構成

以下に、ダウンローダ環境を構成するのに必要なソフトウェアとその詳細を示します。

1.2. ダウンローダ環境の運用

この節では、ダウンローダ環境の運用について説明します。

1.2.1. ダウンローダ環境について

ダウンローダ環境は、以下のような機能を持ちます。

1.2.2. ダウンローダによるアプリケーションの取得までの流れ

以下に、ダウンローダ管理ツールでクライアントアプリケーションを構成し、ダウンローダによりアプリケーションを取得するまでの流れを説明します。

アプリケーションを取得するまでの流れ
図1-1 アプリケーションを取得するまでの流れ
  1. クライアントアプリケーションを作成します。
  2. ダウンローダ管理ツールを使用して、アプリケーションサーバからサーバコンポーネントのIFファイルを取得し、制御ファイルを生成します。
  3. 1で作成したクライアントアプリケーションを取得し、2で作成した制御ファイルとあわせて、ダウンローダ情報ファイルを生成します。
    (クライアントアプリケーションの取得は、ファイルコピーまたは、FTP転送により取得することができます。)
  4. ダウンローダ管理ツールを使用して、ダウンローダ情報ファイルと配布ファイル一式を Webサーバにアップロードします。
  5. クライアントのWebブラウザによりWebサーバ内のダウンローダ情報ファイルをダウンロードします。
  6. ダウンローダ情報ファイルからダウンローダを起動します。
  7. ダウンローダがダウンローダ情報ファイルの内容から更新の有無を判定し、バージョン情報がある場合はバージョンが新しいとき、バージョン情報がない場合はタイムスタンプが新しいとき、ファイルをダウンロードします。強制ダウンロードにより古いファイルや古いバージョンのファイルをダウンロードすることもできます。
  8. ダウンロードしたファイルを格納します。制御ファイルはレジストリに登録します。
  9. 直接または、ダウンローダ経由でクライアントアプリケーションを起動します。
  10. クライアントアプリケーションからサーバコンポーネントのメソッドを呼び出すことができます。

1.3. WebサーバおよびFTPサーバの設定

ここでは、WebサーバおよびFTPサーバの初期設定について説明します。

1.3.1. Webサーバのキャッシュ設定

Webサーバ および、Webブラウザはファイルのキャッシュにより、ダウンロード処理を短縮する機能があります。このキャッシュ機能により、Webサーバで更新したファイルがクライアントにダウンロードされない場合があります。

Webサーバでキャッシュの有効期限を設定することにより、Webブラウザの設定に関係なく最新のファイルがダウンロードできるようになります。ここでは例として、IIS 6.0※1とIIS 7.0の設定方法を説明します。

IIS 6.0の設定

Windows Server 2003のIIS 6.0について説明します。Windows Server 2008の場合は、IIS 7.0の設定を参照してください(Windows Server 2008のIIS 6.0はFTP機能のみです)。

  1. 「インターネット インフォメーション サービス(IIS)マネージャ」を起動します。
  2. Webサーバに登録したファイルのディレクトリのプロパティを開きます。
  3. [HTTPヘッダー] タブを選択して、 [コンテンツに有効期限を設定する] チェックボックスをオンにします。
  4. [有効期間] ラジオボタンを選択して、5分間を設定します※2
IIS 7.0の設定

Windows Server 2008のIIS 7.0について説明します。

  1. 「インターネット インフォメーション サービス(IIS)マネージャ」を起動します。
  2. Webサーバに登録したファイルのディレクトリの [機能ビュー] から [HTTP応答ヘッダー] を開きます。
  3. [共通ヘッダーの設定] を選択して、 [期限切れのWebコンテンツ] チェックボックスをオンにします。
  4. [失効までの期間] ラジオボタンを選択して、5分間を設定します※2

※1:
IIS 6.0はUNICODE文字に対応していないため、構成ファイルのパスやファイル名として使用する文字をShift-JISで表現できる範囲内に限り、wtdファイルのバージョン番号を9以下に設定してください。
※2:
有効期間を0分にすると、ダウンロード直後に削除されるため、少なくとも5分程度は有効になるように設定してください。ファイル更新のタイミングが決まっているのであれば、有効期限に該当日時を設定してください。

1.3.2. MIMEの設定

ダウンローダ起動時に適切な形式でファイルを取得するため、WebサーバにMIME定義を追加します。
MIMEの設定の手順について各々のOSごとに説明します。

1.3.2.1. Windows

Windows Server 2003のIIS 6.0以降はセキュリティの強化により、MIME設定に登録していない拡張子のファイルはダウンロードが禁止されています。

このため、ダウンローダで扱うファイルについてはMIME設定を追加する必要があります。WebOTXが生成する.gc1.tlb 、および.wtdは必須ですが、その他の拡張子についても、ダウンローダ管理ツールでリストアップしたファイルを参照して設定を追加してください。

以下には、IIS 6.0※1 を使用する場合の設定手順を示します。それ以外のWebサーバを使用する場合は、使用するWebサーバのマニュアルを参考に設定してください。

  1. [コントロール パネル]-[管理ツール]-[インターネット インフォメーション サービス(IIS) マネージャ] を開きます。

  2. [Webサイト]-[プロパティ] を選択します。

  3. IIS設定画面02

  4. [HTTPヘッダー]-[MIMEの種類] を開きます。

  5. IIS設定画面03

  6. [新規作成] ボタンを押下し、[MIMEの種類] ダイアログの [拡張子]、[MIMEの種類] に、それぞれ下の値を設定します。

  7. IIS設定画面04

    拡張子 MIMEの種類
    gc1※2 application/octet-stream
    tlb※2 application/octet-stream
    wtd application/x-wtd

    ※1:
    IIS 5.0以前を利用する場合は必要ありません。
    ※2:
    拡張子「gc1」と「tlb」の定義は、CORBAゲートウェイまたは、EJBゲートウェイ利用時に必要です。

1.3.2.2. HP-UX、Linux、Solaris

以下には、WebOTX Webサーバを使用する場合の設定手順を示します。それ以外のWebサーバを使用する場合は、使用するWebサーバのマニュアルを参考に設定してください。

  1. /opt/WebOTX/WebServer/conf/mime.typesファイルをエディタで開く。


  2. mime.typeファイルに [MIMEの種類] と [拡張子] の値を追加する。

  3. 拡張子 MIMEの種類
    gc1※1 application/octet-stream
    tlb※1 application/octet-stream
    wtd application/x-wtd

    ※1:
    拡張子「gc1」と「tlb」の定義は、CORBAゲートウェイまたは、EJBゲートウェイ利用時に必要です。

  4. 設定を有効にするために、Webサーバを再起動します。

1.3.3. Webサーバへの仮想ディレクトリ定義追加

Webサーバで WebOTX Downloader Contents のインストールディレクトリ内容を公開するため、仮想ディレクトリを設定します。
Webサーバへの仮想ディレクトリ定義追加の手順について各々のOSごとに説明します。

1.3.3.1. Windows

以下には、IIS 6.0 を使用する場合の設定手順を示します。それ以外のWebサーバを使用する場合は、使用するWebサーバのマニュアルを参考に設定してください。

WebOTX Downloader Contents を [システムドライブ]:\Inetpub\wwwroot\WebOTX にインストールしている場合、以下の設定は不要です。

  1. [コントロール パネル]-[管理ツール]-[インターネット インフォメーション サービス(IIS) マネージャ] を開きます。

  2. [既定のWebサイト]-[新規作成]-[仮想ディレクトリ] を開きます。

  3. IIS設定画面05

  4. [次へ] ボタンを押下し、使用するエイリアスを入力して、[次へ] ボタンを押します。

  5. IIS設定画面06

  6. [参照] ボタンを押下し、本製品がインストールされたディレクトリを指定してから、[次へ] ボタンを押します。

  7. IIS設定画面07

  8. 仮想ディレクトリのアクセス許可を設定して、[次へ] ボタンを押します。

  9. IIS設定画面08

  10. [完了] ボタンを押して、設定を完了させます。

1.3.3.2. HP-UX、Linux、Solaris

以下には、WebOTX Webサーバを使用する場合の設定手順を示します。それ以外のWebサーバを使用する場合は、使用するWebサーバのマニュアルを参考に設定してください。

  1. /opt/WebOTX/domains/<domain_dir>/config/WebServer/httpd.confファイルをテキストエディタで開く。


  2. 次の記述を任意の場所に追加する。
    Alias /webotx/ "/opt/WebOTX/Downloader/"
    <Directory "/opt/WebOTX/Downloader">
          Allow from all
    </Directory>
    

1.3.4. ファイル転送のためのFTPサーバ構成

ダウンローダ管理ツールは、FTPによりファイルをアップロードしますが、FTPによる転送先として、あらかじめ、適切なHTTPのドキュメントディレクトリを割り当てておく必要があります。

以下に、仮想ディレクトリを利用した設定方法を、IIS 6.0を例として説明します。

  1. IISのインターネットインフォメーションサービスマネージャを立ち上げます。
  2. [FTPサイト] を開きます。
  3. [既定のFTPサイト] 上で右クリックし、 [新規作成] から [仮想ディレクトリ] を選択し、ウィザードに従って以下の項目を設定します。
設定項目設定内容
エイリアス 任意の名称を設定。
ダウンローダ管理ツールで指定するFTPパス※1は、ここで設定した名称を使用します。
パス クライアントマシンから参照する、Webサーバ上のディレクトリ※2を指定します。
アクセス許可 読み取り/書き込み、それぞれチェックします。

※1:
詳細については、以下を参照してください。
[ 2. チュートリアル > 2.1. クライアントアプリケーションのアップロード > 2.1.3. アップロード先の設定 ]の [Webサーバ設定]-[転送] タブ
※2:
IISにおいて、Webサーバのルートディレクトリとして既定値が割り当てられている場合、以下のディレクトリを設定します。
<インストールドライブ>:\Inetpub\wwwroot
(IISがCドライブにインストールされている場合、C:\Inetpub\wwwroot)

1.4. ファイアウォールの設定

ダウンローダ環境が使用するポート番号と Windowsファイアウォールの設定について説明します。
ファイアウォールのある環境で運用する場合、ファイアウォールの例外設定に、次のプログラムやポート番号を追加してください。

○ WebOTX Application Server(アプリケーションサーバ)で使用するポート番号

ポート番号/プロトコル 設定内容
5202/TCP(既定値) ダウンローダ運用管理ツールがアプリケーションサーバからサーバコンポーネントのインタフェース情報(ifファイル)を取得する際に使用します。

アプリケーションサーバは5202が外部と通信可能な状態である必要があります。このため、ファイアウォールのある環境で運用する場合、ファイアウォールの例外設定に、次のポート番号または、ファイル名を追加してください。

ポート番号/プロトコル ファイル名 機能名
5202/TCP(既定値) JavaVM上 (javaw.exe) で動作するため、固有のファイル名がありません。ポート番号を設定してください。 ダウンローダ管理サービス

○ Webサーバ/FTPサーバ環境で使用するポート番号

ポート番号/プロトコル 設定内容
21/TCP ダウンローダ管理ツールがファイルの転送に FTPを使用する場合、ファイル転送の通信で使用します。パッシブモードによる転送のため、データ転送用に一時ポートの開放が必要です。
一時ポート
80/TCP ダウンローダによりファイルをダウンロードする場合、ダウンロード時の通信で使用します。httpの既定値は 80/TCPですが、SSLを使用した httpsの既定値は 443/TCPです。
6001/TCP ASP更新にASP配備サービスを使用する場合、ダウンローダ管理ツールがASP配備サービスとの通信で使用します。

Webサーバ環境はすべてのポートが外部と通信可能な状態である必要があります。このため、ファイアウォールのある環境で運用する場合、ファイアウォールの例外設定に、次のポート番号または、ファイル名を追加してください。

ポート番号/プロトコル ファイル名 機能名
21/TCP FTPサーバのファイル名を指定します。 登録済みの名前から「FTP サーバー」を選択します。 FTPサーバ
一時ポート※1
1024-5000/TCP
(Windows Server 2008以降)
49152-65535/TCP
FTPサーバにIISを使用する場合は、<Windowsシステムディレクトリ>\inetsrv\inetinfo.exeを指定します。
IIS以外の場合はFTPサーバのマニュアルを参照して、該当するファイル名を確認してください。
80/TCP Webサーバのファイル名を指定します。 IISの場合、登録済みの名前から「Web サーバー」または、「World Wide Web サービス」を選択します。 IIS以外の場合はWebサーバのマニュアルを参照して、該当するファイル名を確認してください。 Webサーバ
6001/TCP <インストールディレクトリ>\ASP_Deploy\olfdlsv.exe ASP配備サービス

※1:
Windows OS 上で、一時ポートが取り得る既定値の範囲です。

1.5. Windows Vista以降の対応について

1.5.1. ユーザアカウント制御(UAC)の概要

Windows Vista以降のOS仕様による影響として、「権限昇格時に表示されるUACの昇格ダイアログ」について説明します。

1.5.2. ユーザアカウント制御(UAC)におけるダウンローダの挙動

ユーザアカウント制御(UAC)下における、ダウンローダの動作について説明します。

※1:
ドメインユーザで運用している場合
ドメインユーザのローカルマシンに対する権限は、そのドメインユーザに付与された権限となります。

1.6. JIS2004文字の使用について

Windows XP/Windows Server 2003上でファイル名としてJIS2004の文字を使用する場合、フォントのインストールが必要になります。
以下のサイトを参照してフォントパッケージをインストールしてください。

[Windows XPおよびWindows Server 2003向けJIS2004対応 MS ゴシック & MS 明朝フォントパッケージについて] (アドレスは2012年3月のものです)
http://www.microsoft.com/japan/windows/products/windowsvista/jp_font/jis04/default.mspx

1.7. Internet Explorer 9 使用上の注意

クライアントアプリケーションのダウンロードに Internet Explorer 9 を使用し、以下の条件を満たす場合、Webブラウザ上のリンクからwtdファイルの拡張子に関連付けられたダウンローダが起動せず、通知バーにwtdファイルのダウンロードが完了したこと示す動作になります。

これは SmartScreen フィルターによるセキュリティ スキャンでファイルの安全が確認できないために発生します。

この場合には、通知バー内の[ファイルを開く]ボタンを押下してダウンローダを起動してください。