SigmaSystemCenterのストレージ制御の対象となる環境について説明します。ストレージ制御の対象となる環境は、FC SAN、iSCSI SAN、NASの3種類があり、それぞれ管理の方法が異なるため、環境別に概要を説明します。
実際は、ストレージ装置の種類により、後述の図と異なる概念、用語が使用されていますが、SigmaSystemCenterはストレージ装置の差異を隠蔽化し、後述のような形でストレージ環境を表現しています。SigmaSystemCenterが対応している各ストレージ装置の詳細については、「6.7. 各ストレージ装置のストレージ制御詳細」を参照してください。
(1)FC SAN環境
FC SAN環境では、管理対象マシンは、管理対象マシンに搭載されたHBAから、ファイバチャネル(FC)で構成されたSAN経由でディスクアレイのコントローラの各ポートに物理的に接続されます。
ディスクアレイには、ストレージプールが作成され、ストレージプール内にはディスクボリューム(LUN)が作成されます。ディスクボリュームの作成はSigmaSystemCenterから行うことができます。また、ストレージプールの使用状況の情報はSigmaSystemCenterのWebコンソールなどで閲覧することができます。
SigmaSystemCenterの接続制御によりディスクボリュームと管理対象マシンが接続されると、管理対象マシンからディスクボリュームにアクセスできるようになります。FC/iSCSI SAN環境の場合、接続制御は一般的に"LUNマスキング"(アクセスコントロール制御) と呼ばれ、ディスクボリュームと管理対象マシンとの割り当ての定義がディスクアレイに対して行われます。
ディスクボリュームの作成や接続の制御を行うために、SigmaSystemCenterに管理対象マシンとディスクアレイやディスクボリュームの情報を登録する必要があります。
ディスクアレイには、ディスクアレイ名、IPアドレスの情報があります。IPアドレスは、ストレージ制御の際、SigmaSystemCenterからディスクアレイに接続する必要がある場合に使用されます。管理ポートが冗長化されている場合、IPアドレスはフローティングIPアドレス、後述のコントローラIPアドレスは管理ポートの実IPアドレスとして管理されます。
ストレージプールは、ストレージプール名とストレージプールIDの情報があります。これらの情報はディスクアレイ上のストレージプールを識別するための情報として使用されます。
ディスクボリュームの情報はディスクボリューム名、ディスクボリューム番号、LUN、UniqueIdがあります。それぞれ、次の用途で使用します。
ディスクボリューム名(LUN名) : ストレージ管理ソフトウェア上に登録されるディスクボリュームの名前です。SigmaSystemCenterにディスクアレイが登録されていない場合は、[仮想]ビューでは仮想化基盤製品が認識するディスクボリュームの名前が表示されます。
データストア名 : ディスクボリュームが仮想化基盤製品上でデータストアとして登録される場合の、データストアの名前です。
ディスクボリューム番号 : ディスクアレイ上のディスクボリュームを識別するための番号です。ディスクボリュームは、必ずディスクアレイ内で一意の番号が割り当てられます。
LUN : 管理対象マシン上でディスクボリュームを識別するための番号です。管理対象マシン内で必ず一意の番号が割り当てられます。SANブートの場合は、HBAのBIOSで管理対象マシンが起動に使用するディスクボリュームの指定をLUNで行います。
UniqueId : システム全体でディスクボリュームを一意に識別するためのIDです。
管理対象マシンのHBAは、WWPN/WWNNとHBA番号の情報で構成されます。WWPN/WWNNの情報はディスクアレイ上で管理対象マシンからのアクセスパスを識別するために使用されます。HBA番号はSigmaSystemCenter上でHBAを特定するための情報として使用します。HBAを冗長構成にする場合は、使用するすべてのHBAをディスクアレイに登録する必要があります。
ディスクアレイのコントローラは、SigmaSystemCenterではコントローラのポートと管理ポートの情報が管理されます。各情報は、SigmaSystemCenterのWebコンソールなどで閲覧することができます。
コントローラのポートの情報としては、WWNがあります。冗長構成の場合は複数のポートの情報が登録されます。
コントローラの管理ポートの情報としては、コントローラIPアドレスがあります。冗長構成の場合は複数の管理ポートの情報が登録されます。前述のIPアドレスの説明のとおり、コントローラIPアドレスは管理ポートの実IPアドレスの情報として扱われます。
(2)iSCSI SAN環境
iSCSI SAN環境では、管理対象マシンはTCP/IPネットワーク(IP-SAN)経由でディスクアレイのコントローラの各ポートに物理的に接続されます。管理対象マシン側はiSCSIイニシエータが接続の起点となります。 SigmaSystemCenterでは、iSCSIイニシエータをHBAとして管理します。
SigmaSystemCenterに登録するiSCSIイニシエータの情報はイニシエータ名、HBA番号の情報で構成されます。イニシエータ名の情報は、ディスクアレイ上で管理対象マシンからのアクセスパスを識別するために使用されます。SigmaSystemCenterでは、イニシエータ名をHBAのアドレスとして登録して使用します。
iSCSIイニシエータ以外については基本的にFC SAN環境と同様の管理を行います。FC SAN環境の説明を参照してください。
iSCSIイニシエータには次の2種類があります。
ハードウェアイニシエータ
専用のiSCSIのHBAを使用します。
なお、iSCSIブート対応のNICとしてiSCSI Boot Firmware Table(iBFT)と呼ばれる技術が搭載されたNICとソフトウェアイニシエータの組み合わせで利用されている場合、本書ではハードウェアイニシエータとして扱います。
iBFTのNICとソフトウェアイニシエータの組み合わせによりiSCSIブートが利用可能になりますが、イニシエータの設定はNIC上で行われるため、SigmaSystemCenterではマシンに紐付く情報として管理することができます。
ソフトウェアイニシエータ
ソフトウェアイニシエータは、OSの一機能として提供されます。Windows、Linux、VMware ESX/ESXiでサポートされます。利用するために、ドライバなどをインストールしたり、イニシエータの情報を設定したりする必要があります。
ソフトウェアイニシエータについては、sscコマンドによる管理対象マシンとディスクボリュームの接続と切断の制御のみの実行をサポートします。グループプロパティ設定/モデルプロパティ設定/ホスト設定にディスクボリュームの接続の定義を行うことでリソース割り当てや置換などの操作のときに行われるストレージ制御はサポートしません。
(3)NAS環境
NAS環境では、管理対象マシンは、管理対象マシンに搭載されたNICから、TCP/IPネットワーク経由でディスクアレイに物理的に接続されます。
NAS環境では、NFSなどのファイル共有のプロトコルにより、ファイルサーバの機能を提供するアプライアンスサーバ上で公開されている共有ディスクに対してTCP/IPネットワークを経由して管理対象マシンからアクセスを行うといった利用が行われます。他のストレージ環境に合わせて、SigmaSystemCenterではファイルサーバをディスクアレイ、共有ディスクをディスクボリュームとして管理します。
ディスクアレイには、ストレージプールが作成され、ストレージプール内にはディスクボリュームが作成されます。ディスクボリュームの作成はSigmaSystemCenterから行うことができます。また、ストレージプールの使用状況の情報はSigmaSystemCenterから閲覧することができます。
作成されたディスクボリュームは、SigmaSystemCenterの接続制御により管理対象マシンと接続状態にされることにより、管理対象マシンからアクセスできるようになります。接続されていないディスクボリュームへは管理対象マシンからアクセスできません。
ディスクボリュームの作成や接続の制御を行うために、SigmaSystemCenterに管理対象マシンやディスクボリュームの情報を登録する必要があります。
ディスクアレイの情報には、管理対象マシンで使用される接続先の情報で構成されます。
サーバアドレス : 管理対象マシンとディスクアレイの接続におけるディスクアレイ側のアドレスです。ディスクボリュームにアクセスするための接続先の情報として、管理対象マシンのOSが使用します。SigmaSystemCenterでは、ssc create datastoreコマンドを実行する際に必要となります。
ストレージプールは、ストレージプール名とストレージプールIDの情報があります。これらの情報はディスクアレイ上のストレージプールを識別するための情報として使用されます。
ディスクボリュームの情報はディスクボリューム名やUniqueIdがあります。それぞれ、次の用途で使用します。
ディスクボリューム名(LUN名) : ストレージ管理ソフトウェア上に登録されるディスクボリュームの名前です。SigmaSystemCenterにディスクアレイが登録されていない場合は、[仮想]ビューでは仮想化基盤製品が認識するディスクボリュームの名前が表示されます。
データストア名 : ディスクボリュームが仮想化基盤製品上でデータストアとして登録された場合の、データストアの名前です。
フォルダ名 : データストア登録時に仮想化基盤製品に公開するディスクボリュームの共有フォルダ名です。ディスクボリューム名の頭に"/"を付けると共有フォルダ名になります
UniqueId : システム全体でディスクボリュームを一意に識別するためのIDです。
管理対象マシンのNICは、NIC番号やMACアドレスなどの情報で構成されます。NIC番号により、NICとホスト定義のIPアドレスの設定が関連付けられます。
NAS環境では、管理対象マシンの情報として、IPアドレスの情報が必要です。IPアドレスの情報は、ディスクアレイ上のディスクボリュームに対する管理対象マシンからのアクセスをフィルタリングするために使用されます。このフィルタリングの設定により、ディスクボリュームと接続を行っている管理対象マシンはアクセスできるようになり、また、ディスクボリュームと接続を行っていない管理対象マシンはアクセスできなくなります。
SigmaSystemCenterでは、管理対象マシンのIPアドレスの情報はホスト定義中にあるため、リソース割り当てやマスタマシン登録などの操作でホスト定義にマシンリソースが割り当てられた状態にしておく必要があります。