非常用ホストとは、VM退避機能による仮想マシンの退避時に限り、退避先として利用する仮想マシンサーバを指定する機能です。
仮想マシンサーバ故障時における対応を考慮する場合、故障した仮想マシンサーバ上で動作している仮想マシンをどこに退避するのかを考える必要があります。
VM退避機能では、これらの判断を自動的に行い、リソース状況を考慮して仮想マシンの退避先を決定します。
図: 通常のVM退避
しかし、たとえば仮想マシンの性能を重視するような運用においては、他の仮想マシンに影響が発生するような移動を行わない制御が必要となる場合があります。
このような場合の対応方法のひとつとして、事前に退避先として利用する仮想マシンサーバを用意しておき、障害時にはこれ以外の仮想マシンサーバへの仮想マシン移動が発生しないように構成する方法があります。
この設定は、VM配置制約機能による設定を行うことでも可能ですが、ホストを追加した場合に設定を見直す必要があり、また正しく設定されているかの検証も容易ではありません。
非常用ホストは、このような退避先としてのみ利用する仮想マシンサーバを指定し、VM最適配置/最適起動などによる移動先の制御を行うための設定です。
図: 非常用ホストが存在する場合のVM退避
非常用ホストに設定された仮想マシンサーバは、VM退避機能による仮想マシンの移動時のみ利用されます。
仮想マシンの起動/移動操作時や、負荷分散・省電力時の起動/移動先としては利用できません。
非常用ホストに指定されている仮想マシンサーバを仮想マシンの起動/移動先として利用する場合、事前に非常用ホストの設定を解除する必要があります。
図: 非常用ホストへのVM退避以外の移動
非常用ホストの状態には、「無効」、「有効」、「有効 (開封済)」があります。
「無効」である場合、非常用ホストとして設定されていません。
「有効」である場合、非常用ホストとして設定されています。
「有効 (開封済)」である場合、非常用ホストとして設定されていますが、開封されています。
VM退避操作を実施し、電源状態がOnである仮想マシンの退避先として利用された非常用ホストは「有効 (開封済)」の状態になります。
この状態の非常用ホストについては、非常用ホストに設定されていない場合同様、VM退避操作以外での起動、および移動先として利用することが可能です。
ただし、VM退避処理については、「有効 (開封済)」の非常用ホストを移動先として再度利用することはできません。
「有効 (開封済)」となった非常用ホストは、再度「有効」に設定し直すことで、非常用ホストとして再使用することができます。
なお、「VM退避実行後も非常用ホストを開封しない」設定となっている場合は、VM退避操作で退避先として使用された場合にも、「有効」の状態が維持されます。
すべての非常用ホストが「有効 (開封済)」の状態となっている場合、VM退避操作では、仮想マシンにVM配置制約が設定されている場合を除き、仮想マシンを移動できません。
非常用ホストを利用する場合、複数台の仮想マシンサーバで障害が発生した場合の退避操作の可否については、注意する必要があります。
図: 有効(開封済)のときのVM退避
省電力によるシャットダウン操作は、非常用ホストに対しては実行されません。
このため、省電力のポリシーを利用した場合でも、非常用ホストが省電力操作により停止することはありません。
VM退避の実行時、非常用ホストが存在することを検出した場合には、仮想マシンの移動先として非常用ホストのみを利用するように移動を計画します。
非常用ホストが複数台存在する場合、これらの非常用ホストに設定された仮想マシンサーバ間で、リソース状況を考慮して移動先を決定します。
ただし、仮想マシンにPin制約が設定されている場合は、制約による移動先を優先的に処理します。
表: Pin制約と非常用ホスト併用時の退避先
Pin制約 | 退避先 |
---|---|
あり(force指定) | force指定の制約先のみ |
あり | 制約先と非常用ホスト(制約優先) |
なし | 非常用ホストのみ |
図: 制約と非常用ホストが存在する場合のVM退避
非常用ホストにすべての仮想マシンを退避できない場合、可能な限り非常用ホストに退避し、残りは退避を行いません。
ただし、停止中の非常用ホストが存在する場合には、非常用ホストを起動して退避を行います。
また、複数台の非常用ホストが設定されている場合は、退避可能な仮想マシンをすべて移動させるために必要な台数の非常用ホストを起動します。
複数の非常用ホストが存在する場合、VM退避操作による仮想マシンの移動先は、非常用ホストの電源状態と優先度により決定されます。
起動状態の非常用ホストは、優先度の設定に関わらず、常に停止状態の非常用ホストより優先的に利用されます。
複数の非常用ホスト間に優先度の差がある場合、VM退避操作では優先度の高い非常用ホストから利用していきます。
同じ優先度の非常用ホストが複数台存在する場合は、これらの非常用ホストに分散するよう、仮想マシンを退避します。
例として、
起動中、優先度1
停止中、優先度3
起動中、優先度5
という状態の非常用ホストが存在する場合、VM退避の移動先としては、(1), (3), (2)の順に利用されることに注意してください。
非常用ホストの設定は、Webコンソールのホスト設定、またはsscコマンドから設定します。
詳細については、「SigmaSystemCenter コンフィグレーションガイド」、または「ssc コマンドリファレンス」を参照してください。